台湾一周のんべんだらり歩行

台湾を歩いて一周(環島)する日記

【台湾徒歩環島】30日目 花蓮県竹湖村~花蓮県豊浜郷

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みんなが寝静まるなか、六時前に出発。
清々しい朝。凛とした空気が気持ちいい。
昨晩の余韻がまだ頭に残っているのか、夏休みのラジオ体操のメロディーが頭の中でリピートする。

『新しい朝が来たキボウの朝だ』



まわりがまだ寝ている時に、同じく活動している少数派の連帯感が生まれるのか、釣り人と親しみを込めて挨拶を交わし少し話をする。
涼しいので調子よく歩いていたら、一台の車がクラクションを鳴らし後ろから追い付いてくる。
窓を開け「加油!」と叫ぶ声が。みんながこちらに手を振っている。
同室の男の子達だった。
四人も早起きすると言っていたが、もう追い付かれ、そして遠ざかっていく。



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そしてすぐ後に、今度は同じ宿だった自転車環島の男の子が追い付いてくる。
彼とはこの場ではライン交換をして別れたのだけれど、この後の長濱の中心地で蛋餅と豆乳を買って待っていてくれる。ここの蛋餅は皮から手作りで美味しいからと。
彼はすでに食べ終えていたので、先を急ぐからと出発していった。
僕はセブンイレブンで昼の食料を買い込み、美味しいツナ蛋餅を食べる。



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長濱の街も意外と賑やかで驚く。
規模は小さいけれど、人が溢れ活気がある。
なんだかんだ街は楽しい。台湾の田舎町は人の生活がすぐ側にあり、歩きながら垣間見ることができる。



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薬局で足の豆が化膿しないように消毒液を買い、街を散策しながら歩いていると(とは言っても繁華な通りは一本しかないが)、果物屋のおじさんに呼び止められる。
おじさんは僕が徒歩環島と知ると、台に並んだバナナの中から一番美味しそうな一房を取り、台湾のバナナは美味しいよ、持っていきなと手渡してくれる。本当に美味しそうだ。
そんなにたくさんお金払いますよと財布を出すと、いいからいいからとニコニコして受け取らない。
おじさんの笑顔に甘え、お礼をいい美味しそうなバナナを大喜びでザックに詰め込む。



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町外れに差し掛かるところ、家の中から声がかかる。

「徒歩環島しているのか?」

おじさんが携帯を片手に家から出て、携帯に向かい頻りに話しかけている。
テレビ電話でもしているのかと思っていたら、Facebookライブ配信していると言う。
こんな長閑な田舎でおじさんがライブ配信、なんか変な感じがするが、そんな時代になったのかと年寄りみたいな感想を抱く。
配信おじさんに招かれ、お茶とミカンを頂きながらなぜか動画配信に参加することになる。
何を話していいかわからないので、早々に退散したいのだかなかなか帰してもらえない。
おじさんの下ネタに付き合わされる。おじさん二人の下ネタを、画面の向こうで何人かのおじさんが見ている、ある意味シュールだがこれの何が楽しいのか。



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どうにかおじさんをかわし出発。三十分くらいはいた気がする。だいぶ出遅れてしまった。
狭い平地を利用し田んぼが続く。その向こうには青い海。
景色は爽やかだけれど影がない。
ペットボトルの水がまるでぬるま湯のようになり、喉は乾いているのに飲む気が起きない。が、熱中症を考えると飲まないわけにはいかない。無理矢理ぬるま湯を流し込む。



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昼前に八仙洞に着く。ここには食べ物屋やお土産屋が並び、高そうだがレストランもインフォメーションに併設されていた。
たくさんの観光バスが駐車され、大量の人を吐き出してはまた飲み込んでいく。
なかなか有名な観光地なのか。
花東公路から八仙洞に延びる道は、まるで四国遍路の足摺岬から御厨人窟のような感じがした。
洞窟はいくつもあるらしいが、あまりゆっくりしている時間はない。
インフォメーションのおばちゃんに相談すると、荷物預かっててあげるから、一つ目と二つ目だけ行ってきたらと薦められるので、ササッとお茶漬けを掻き込むように見て回る。



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涼しくて雨も凌げる。遥か昔し原始人が生活をしている姿を想像すると、なかなか悪くない住居な気がする。
そんな楽しい想像も早々に打ち切って、インフォメーションに帰りパンとバナナで昼食にする。
その間も中国人観光客がひっきりなしにやってくる。
総統が蔡英文になり、中国大陸からの観光客が激減したと聞いたけれど、それでもこんなにたくさんの中国人を見かけるということは、馬英九の時はどれほどのものだったのか。
この後北回帰線も通りかかるが、そこにも大陸からの観光客が溢れていた。



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静浦村。アミ族の人々が暮らす村らしいが、建物がオレンジと白で統一されていて可愛い。
村を通りすぎていくと、村人の好奇の目が集まってくる。
歩いていると察した子供達が、声援を送ってくれる。
兄弟だろうか、大中小と並んだ三人の男の子が親指を立てて見送ってくれるが、その中の一番小さな子供だけ、親指を逆さにしている。

「なんで下なんだ!? 上、上!」

と怒ったフリをすると、キャッキャと大喜びしていたが、兄二人に失礼だろと怒られていた。
これは勝手な思い込みなのかもしれないが、田舎の子供は純朴そうに見えてしまう。
真っ黒に日焼けした顔中の笑顔が可愛い。



静浦村を抜けるころ、そろそろ今日の寝る場所を探さないといけないなと思っていたら、ちょうどインフォメーションがある。
小さな村の割りに立派なインフォメーションで、中にはカフェもあったので、スプライトを注文し情報収集することに。
インフォメーションの女の子に話しかけると、今朝あなたが歩いてるのバスから見かけたと言われる。
この子がとても親切で、安い宿かテントを張れる場所を探していると言うと、パソコンで親身になって調べてくれるが、如何せん周囲に宿泊施設は一軒のみで高い、何件か電話してくれたキャンプ場もやっていないか高すぎる。
台湾の正規のキャンプ場は、1000元くらいの料金もざらにあり、ひとりで利用すると宿より高いことがよくある。
けっきょくこの先にある学校でテントを張ったらいいと言うことになり歩き出す。



それほど遠くない小学校に着くと、正門の先でちょうど先生が二人立ち話をしていた。
五月一日は祝日なので、誰もいないかもしれないとインフォメーションの子と話していたが、なにか行事でもあるのか子供達も構内に残っている。
先生に事情を説明してる間、壁から顔だけだした子供達がこちらを覗き込み、『外人が来た!』といった反応で、入れ替わり立ち替わりチラチラと様子を見にやってくる。まるで外人になった気がしてくる。
先生が上司にテント泊していいかを聞きに行って帰って来る。
台湾の学校では、旅人のテント泊にはかなり寛大だという話を何人かに聞いていたので、断られないと高を括っていたのが間違いだった。見事に断られてしまった。
今日は遅くまで学校を使う予定があるのでダメということだったが、ダメなものは仕方ないので再び歩き出す。



当てもなく歩き、時間的に焦り始めた頃、石梯坪に辿り着く。
ここにもキャンプ場があるが、静浦のインフォメーションの子が凄く高いと言っていたので、海岸でテント泊できる場所はないかとウロウロ徘徊。

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無事設営。
地面は砂利混じりの砂浜なので、硬くはない。
夕飯と明日の朝はおじさんのバナナがある。水もギリギリ足りそう。
問題は蚊だけだ。虫除けスプレーを枕元に置き、戦闘準備を整え寝袋に潜り込む。
今日の夜の海は、昨日とはうって変わりうら寂しい。