【台湾徒歩環島】15日目 新營~善化
新營から善化も似たような道が続く。
もうこの道は飽きた。
休憩に腰を下ろしたら、どこからともなく駆け寄って来た犬。台湾は狂暴な犬が多いから、可愛い犬が来ると大袈裟なくらい大歓迎で迎える。
悪い道じゃない。悪い道じゃないんだけど、ずっとこんな感じなんだよね。
自動車学校の車が、その辺に廃棄されてる車くらいボロくて味がある。
また事故を目撃。もう何回目だろう。一日中歩いてるから目撃が多いのか、台湾はバイクが多くて運転も荒いから多いのか。
台湾のスープは「素材の味のみで作りました!」っていう感じで、どんどん美味しく感じてくる。
お店の人と一緒に。僕は得意の半目で写らさせてもらいした。
暑いからと縁起の良さそうなお茶を頂く。
屋根の上に三人仲良く並ぶ仙人。
この直後、自転車のおじさんに話しかけられる。
台南に住むおじさん。毎日台南と新營を往復しているらしい。
少し話して去っていくのかと思いきや、自転車を下りてガッツリ話し込む体勢に。自転車を押しながら一緒に歩く。
色んな話をする。台中関係、社会情勢、政治家、軍事力、台湾経済、おじさんちの経済状況、旬の果物、果物を安く買う方法……
とにかく語りまくる。
途中まだまだ青いマンゴーの木が道路脇に生えている。
おじさんがこっそりもぎ取り、これが熟したのより酸味と甘味があって美味いんだ食べてみろとくれる。
それ泥棒でしょと笑いながら、言われた通り上の部分だけ齧って捨て、がぶりつく。
こんな青いのが本当に美味しいのかと半信半疑で食べてみたが、なんとこれが予想以上に不味い。酸味と酸味、そして酸味。
マズイ……スッパイ……アマクナイ……と吐き出す。
おじさん納得がいかなかったのか、皮があるから酸っぱいんだと皮を剥き始める。
もういらないんだけど、せっかく剥いてくれたので食べてみる。確かにマシにはなった。でもやはり美味くはない。
美味くはないなあと言いながらも、せっかく剥いてくれたので全部食べた。胃にいいらしい。
年配で体力や健康に自信がある人は、年齢を聞くとよく「何歳に見える?」と返してくる。あれはいったいなんなのか。
このおじさんも例に漏れず聞き返してきた。
こういう場合、実際はけっこう年を取っているのに、実年齢より若く見えてこちらが驚く、というパターンなわけだが、じゃあ見た目より少し多目に言ったら当たるだろうと思い、「70歳!」と言ってみる。
「違う57だわ!70て……」
かなり外してしまった。悪い方に。思わず自分で吹き出す。こんなに外れるとは。おじさんには失礼なことをした。
そんなこんなで一時間半か二時間くらい一緒に歩いていたんじゃないか。
おじさんとは向かう先が違うので分岐でそれぞれの方向へ別れることに。
楽しい時間はあっという間だ。
善化の駅に着き、いつものように駅近くの安宿を探し始めるが、宿自体一件も見当たらない。
一応前日の宿の旦那さんにも、さっきの自転車のおじさんにも、善化駅の近くに宿があるか聞いたらたぶんあると言っていたんだけど。
仕方がないので駅から縦に延びるメインストリートを歩いて行くことに。
駅から延びるストリートは、一本しかないとはいえそれなりには栄えている。宿があってもおかしくないくらいは栄えているのに、それらしい建物は一向に見えてこない。聞いてみても、離れたところに汽車旅館があるというだけで、安宿は誰も知らないという。
三十分ほど歩いただろうか、道の先に繁華街の終わりが見えてきた。困ったなと思い目の前の飲料店の女の子に聞いてみる。女の子三人があーでもないこーでもないと話しているが、一人の女の子がふと言った。
「ねえ……すぐそこって泊まれるのかな……? 知ってる……?」
他の二人は知らないとブンブン首を降る。
そして沈黙。
まるで禁句を口にしたような、タブーに触れてしまったような雰囲気。
女の子が言うには、二軒隣に何かがあるらしいけど、そこが宿泊できるのかは誰にもわからないから、直接聞いてみてくれと言うことだ。二軒隣なのに謎。
その二軒隣がここ。ここだけ雰囲気が異様。
中を覗くとおばちゃん四人が薄暗い中テレビを見ている。怪しすぎる。もし僕が女の子だったら、そのまま売り飛ばされそう。絶対まともな宿じゃないだろと思いつつも泊まれるか聞いてみる。
600台湾ドル。
こんな感じだ。
おばちゃん達も怪しさ満点だけど、なんだかんだ世話を焼いてくれる。みんな優しい。
そして僕はこういう宿が嫌いじゃない。どこがいいわかからないけど、なんか好きだ。
夕飯。鴨尽くし。
夜中に変な声が響いてくるんだろうなあと思いながら就寝。
十五日目歩行距離25㎞ トータル464㎞