台湾一周のんべんだらり歩行

台湾を歩いて一周(環島)する日記

【台湾徒歩環島】26日目 尚武~三和

今日も早起き。夜明けと共に出発。今日中に台東まで行けたらいいのだけど、50㎞以上あるので諦めて目的地を手前にある三和にする。そこなら40㎞くらい。


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最近飛ばしている。なんでこんなに毎日休みなく長距離を歩き出したかというと、四十日で台北に着こうと思うと単純に間に合わないからだ。最南端を折り返した時点で大幅に遅れていた。僕と反対の時計回りで来ている歩き環島の二人にLINEで相談してみると、一日30㎞ペースだとやはり間に合わないと言う。二人は色々折衷案を考えて送ってくれるけど、かといって妥協して行きたいコースを変更するのも嫌なので、とにかく歩けるだけ歩いてみることにした。他の人は無理しないほうがいいと心配してくれるし、観光したり楽しんだほうがいいと言ってくれる。それは凄いわかる。本当にその通りだと沁々思う。40㎞あると到着まで食事や休憩込みで12時間。朝五時に起きて着くのが夕方五時半くらい。着いてから手洗いで洗濯、夕飯、シャワー、寝る。一日終わり。それのどこが楽しいのかと聞かれると答えに困る。でもこれも悪くない。ギリギリできるかできないかくらいが面白い気もする。というわけで、最近頑張り始めたというわけだ。





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朝飯にセブンイレブンのおでん。どこのセブンもおでんの隣に春雨とインスタント麺が置いてある。これを自分で袋から出しおでんに入れてレジへ持っていく。この春雨がもちもちで美味い。あとカニかまも謎のプチプチが入ってて美味い。





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今日のルートは最初から最後までほぼ海岸沿いを歩く。絶景ではある。ただ飽きた。南部以降、常に右手に海。遠くなったり近くなったりはするものの、いつもそこにある。
この先、台東から花連まで続く花東公路には二通りある。山間部を行く山線、海岸部を行く海線。僕は海線を行こうと決めていたけど、海は十分過ぎるほど眺めたので、本気でどちらへ行くか悩んでいた。明日台東を過ぎる。今日中にどちらにするか決めないといけない。


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所々工事をしていて歩くスペースがない。大型が通ると壁にぴったりと張り付かないといけない。日本は基本歩行者優先だけれど、台湾は車優先なのかギリギリをぶっ飛ばしていくので、戦々恐々としながら歩く。


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昼頃まで黙々と何もない道を歩き続ける。台湾の四月は日本の真夏のような暑さ。太陽にさらされているだけで体力を奪われていく。そしてあまりの暑さに体調が悪くなる。
ルート上に金崙という街へ向かう分岐が現れる。分岐ではあるがすぐにまたルートに合流できるので、一キロも遠回りにはならない。ただ歩きだと、この一キロでさえも無駄に歩くのが嫌になる。そうは言っても、この先もしばらくは何も無さそうなのでここで昼飯にするしかない。


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金崙の街は、小ぢんまりとした温泉街だった。もし時間に余裕があれば一泊したくなるような、程よい雰囲気。こういうとこで日がな一日ぼけーっとしたい。
そうも言ってられないので、体調がある程度良くなってきたころに出発。民宿のおばちゃんが、無料の足湯があるよといってくれたけど、後ろ髪引かれる思いで先を急ぐ。距離があるとなかなかのんびりもできない。




金崙を抜けて1号線に差し掛かったとき、ちょうど前から歩いて来る人が。こんな道をザック背負って歩いてるのは、徒歩環島に決まっている。
車道を駆け渡り近寄ると、帽子にサングラス、口元もしっかり覆っている。女性だと気づく。
向こうもこちらが徒歩環島だと察したのか、日焼け対策の防具を外し挨拶。女性の歩きには初めて出会った。しかも高校を出たばかりで若い。


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取り敢えず名刺交換するように、お互いの環島の過程を報告し会う。
この子は今まで出会った徒歩環島は7人だと言う。写真を見せてもらったが一人もかぶっていない。そして面白いことに、この子が出会う人はみんな若い人ばかりで、僕は年配の人ばかりだ。若い人はいないのかと思ってたけど、たまたまなのか。




別れ際、この先は工事で道がないから凄く歩きにくかったと何度も言うので、どんなものかと思っていたら、ほんとになかった。


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白線より内側にコーンが来たらダメだと思う。


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その後も工事は至るところであり、工事がなくてもギリギリ過ぎるサディスティックな道の連続。これがまた長い。女の子が何度も忠告してくれた理由がよくわかる。




道の幅が広くなる頃には、既に精も根も尽き果てていた。トボトボと力なく歩いていると、自転車環島が何台か追い抜いていく。
二人組の自転車が少し前で止まり話しかけられる。
少し雑談して二人は先を行く。




それから一時間くらい経っただろうか、交差点の道の反対側に、二人が信号待ちしている。

「なにしてたのー?」

と叫ぶが距離があるので会話にならない。
すぐ追い付かれるのはわかっているので、また歩き出すことに。
ほどなく追い付いてきて、冷たいペットボトルの水をくれる。すぐそこの商店で買ってきてくれたものだ。


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二人が何をしてたのか聞くも、説明がよくわからない。すると携帯を取りだし、動画を見せてくれる。


(踏み切りに立つ目の前にいる男性の後ろ姿。肩には鞄を片手で担いでいる。そしてどこかかっこをつけたポーズ。踏み切りの向こう、背景には海が広がる。そしてサイレンが鳴り電車が通過する)


なんなんだこの動画はと思っていると、「桜木花道」と言っている。そしてピンときた。スラムダンクのオープニングに、たしかにこんなシーンがあった。
僕が中学生の頃、多いに流行ったスラムダンク。バスケブームは猛威をふるっていた。他のクラブに所属する男子にはいたたまれない話だが、バスケ部イコールカッコイイ、みたいな空気が校内に充満していた。
海の向こう台湾でもスラムダンクが大人気なのはしっていたが、まさかこんな場所まであるとは。


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よく見たら原付レンタル屋まで、なんの繋がりもないのにスラムダンクにあやかろうとしている。




実は僕はスラムダンクが大好きだ。バスケ部でもなく背の順も前から二番なのに、どうにかダンクはできないものかと本気で練習した。たぶんスラムダンク世代なら、誰もがフンフンフンしたはずだし、右手はそえるだけ、とか無駄に呟いたはずだ。
二人は三百メートル坂を上ればすぐに着くから、絶対に行った方がいいと強引なほど勧めてくる。しかし時間がない。まだまだ先は長いのに、時間は四時を過ぎている。これ以上遅れると三和へ着く前に日が沈んでしまう。それに三百メートルの坂も正直上りたくはない。ただ二人は溢れんばかりの情熱で勧めてくる。GPSで詳しく場所の説明を始めている。二人も同じスラムダンク世代なのかもしれないと思うと、もう行くしかない。


『骨が折れてもいい・・・歩けなくなってもいい・・・!!』

『ダンコたる決意ってのができたよ』


心境はまさにこんな感じだった。




二人と別れ必死こいて坂を上る。
すると踏み切りの周りに観光客らしき人がチラホラ。ほんとにちょっとした観光地になっている。


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観光に来ていたカップルと写真を撮る。写真を撮影してくれたお姉さんに、『ヘルメット取らないの?』と何度も言われていたが、彼は決して取らなかった。


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ドライフルーツのような食べれる花を売っていたお姉さん。次の電車の時刻を調べてくれる。動画の撮影をお願いすると、快く引き受けてくれる。
立ち位置を確認してもらい電車を待つ。
踏み切りを覗き込むと時間通り電車が。『来た来た!』とお姉さんに合図。撮影開始。
サイレンか鳴り、遮断機が降りてくる。
こんなふざけた動画を撮るだけなのに、小心者なので緊張する。そして電車が長くてソワソワする。
なんとが無事にスラムダンクオープニング風動画を撮り終え、妙な連帯感が出来た四人で喜びを分かち合う。
ただゆっくりはしていられない。すでに五時を過ぎている。
三人に別れを告げ、小走りで坂を下る。
けっきょく今日も走るのかと思いながらも、なかなか楽しかったので行ってよかった。


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そして日没直前に三和に到着。
予約したバックパッカーズは無人だった。今行くから待っててと言われるので、猫をかきかきしながら待つ。ここの猫は台湾で出会った猫史上、一番賢くて甘えん坊だ。宿の女将さんが来るまでずっと相手をしてくれる。台湾の田舎のバックパッカーズは、よく無人で電話しないといけないことがあるが、SIMを持ってなかったらどうなるのだろう。




すぐに女将さんが迎えに来てくれる。原住民の女性。陽気で優しく感じがいい。ドミトリーは一人なので、好きに使っていいらしい。
部屋の説明を終えると、三和はなにもないので、食べ物屋がある知本の方まで乗せていってくれることに。そして飯を食べたら公共の温泉へ行こうと言う。知本は温泉の街だ。
温泉は大好きだけど、昨日からハードなので眠くてしかたなかったが、疲れすぎて訳がわからない気分になっていたので行くことにした。
大好きな火鍋を食べファミリーマートで待っていると、女将さんが旦那さんを連れて迎えに来てくれる。いざ知本温泉へ。


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公共温泉は廟の中にある。


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入浴料は無料。賽銭箱があるので任意で入れたらいい。財布にある小銭の残りを入れといたが、見た限り地元の人は入れてなかった。


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この雰囲気がもう最高。タイムスリップしたかのよう。


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湯船がまた汚ならしい。いつから使ってるのか。蛇口から大量の熱湯が出てくるので、それを浴槽にかけてから湯を張る。もちろん石鹸とかはないので持参。女将さんがタオルとお風呂セットを用意してくれた。
温泉は極楽でした。



宿に帰りすぐさま就寝。慌ただしくも楽しい一日が終わる。