台湾一周のんべんだらり歩行

台湾を歩いて一周(環島)する日記

【台湾徒歩環島】25日目 満州港仔~尚武

40㎞オーバーの予定なので、朝五時に起きて五時半に出発。
宿のおじさんには、前日に朝早くに出発すると伝えてあったので、言われた通り鍵は差しっぱなしで、正門の脇にあるドアを勝手に出ていく。

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明け方の街を抜ける。

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小さな街なので、すぐに抜けてしまう。

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右手に太平洋を見ながら歩く。一車線の道が続くけど、ここは本当に交通量が少ない。少ないと言うかほぼない。地元の人しか通らないので、広々と歩ける。



歩き始めて一時間と少し過ぎた頃、後ろからクラクションを鳴らし近づいてくる小型のトラックが。
道の脇に避けて歩いていると、窓を明けこちらになにか叫んでいる。よく見たら宿のおじさんにおばさんだった。この先でなにかあるからたまたま通りすぎたのかと思っていたら、ビニール袋を渡される。中には果物とお菓子の詰め合わせ。起きたら僕がいなかったので、わざわざ届けに来てくれたみたいだ。
昨日おじさんには、元々六時半くらいに出発すると言ってあった。おじさんは何時でも好きな時間でいいよと言われたので、明日の距離を考え寝る前に出発時間を変更した。
こんなに早朝にわざわざ届けに来てもらって、申し訳ないことをした。
お礼を言って受けとる。今日も朝から元気をもらえる。
そして後々この食料に本当に助けられる。

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得意の目をつぶるポーズ。自分でシャッターを押しているのに、なぜつぶってしまうのか自分でもわからない。

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オヤツセットを渡し終わると、来た道を引き返していく。
僕は感無量で歩き始める。



朝飯は昨日のおばちゃんにもらったカステラみたいなお菓子だけだったので、ミニトマトを食べながら歩く。鞄にはたっぷりの野菜と果物。健康的だ。



海から逸れ山へ向かう。山越えの前に、これまた小さな街がある。

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原住民の人達の街はわかりやすい。どこも原住民感を全面に押し出している。
ここの商店で菓子パンを買って食べる。田舎の商店はなんにもなくて割高だ。店のおばちゃんは、この先ほんとになんにもないからと脅かしてくる。



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何もないが林の中にポツポツと民家が点在している。いったいどうやって暮らしているのか。
こちらに気づくと、「がんばれよ~」と応援してくれる。こんなところを歩いてるよそ者は早々いないので、徒歩旅だとわかりやすい。
原付おじさんも、「乗ってきな!」と頻繁に止まってくれる。

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中間地点に街がある。店はほとんど閉店していたけど、空いている商店もあったのでここでも補充できる。
今日は距離が長いので頑張って歩いているのもあるけど、峠を越える間に休めるようなところがなかったのでひたすら歩き、なかなかいいペース。

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と思ったら午後から雨が降りだす。

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環島1号線にもうすぐ合流。合流してからが地獄の始まりだった。



1号線の合流地点に自転車駅があるので、ここでようやく座って休憩ができる。
40㎞以上あると、頑張って歩いてもまだまだ終わりが見えないので萎える。
自転車駅は閉まっていたけど、軒先に屋根がありその辺に転がっている椅子を置いて休憩しようとしたら、どこからか犬が吠えながら駆け寄ってくる。
疲れていたのでカッパを脱ぎ無視して椅子に腰かける。
怒っているのか怯えているのか、寄っては来るが一定の距離を保ち唸っている。
昼飯がまだなので、昨日今日ともらった食べ物を広げランチにする。


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それを見た瞬間、鳴き止む。


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威嚇なんてまるでしていなかったかのように、急にいい子になり見つめてくる。


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あまりの変わり身の早さに、思わずビスケットをあげてしまう。ご満悦の様子。まったく調子のいいやつだ。


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食べ終わると姿勢を正し、この犬僕の飼い犬だったっけと勘違いするほどの礼儀正しさで次を待つ。


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そしてチラ見してくる。

この可愛さにしばらくここで休憩を楽しむ。
ただ先が長いのであまりのんびりもしてられない。もっと遊んでいたいけれど、しぶしぶ出発。犬がついてくるので、危ないから追い返す。

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目の前は一面の深い霧。自転車用のスペースもなく、ダンプや観光バスが多い。

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ビクビクしながら、少しでも早く抜けようと霧の中を小走りで駆け降りる。ここから達仁までは長い長い下りが続く。
休みなく駆け降り、五時半頃に達仁の街に到着。約12時間、予定通り40㎞ちょっとを歩き終え、あとは宿を探したらゆっくりできる、そう思って油断していたら宿が見つからない。大きくないけどそこまで小さくもない、宿があってもおかしくない規模なのに、見つけられないまま町外れへ。しかしそこで民宿の看板を見つける。指し示す方向へ向かってみると、ちょっと綺麗過ぎる民宿が。内心これは値段が高いなと思いつつも、宿の人を呼んでみる。
中から原住民の衣装を着た可愛らしいおばちゃんが。おばちゃんに値段を聞くと、自分は清掃に来ているだけでオーナーじゃないから、電話してあげるから直接聞いてみてと言われる。
なかなか電話が繋がらないので、その間部屋を見てみたりお喋りをして時間を潰す。

「これ絶対高いよ。綺麗過ぎるよ。部屋なんて清潔感ありすぎるよ」

「私が掃除してるから当然よ。いくらくらいなら泊まれそう?」

「500……くらい?」

「それはさすがに無理よ」

そんなことを話していると、折り返し電話がかかってくる。おばちゃんは隣で応援してくれているが、呆気なく撃沈。交渉失敗。
おばちゃんにどっか安いとこ知らないか聞くと、尚武というこの先の街に、凄い古い宿があった気がする、やってるかわかんないけどと言うので、GPS で調べてみる。5㎞先。行きたくはないけど、行けなくもない。

「こっかれ5㎞もあるよ……もうすぐ日が沈むし」

「大丈夫。走ったら大丈夫よ。若い人は体力あるから」

おばちゃんが笑顔で無茶苦茶言ってくる。
ここまでフルマラソンの距離歩いて来たのに、さらに5㎞も走るのかと思うと恐ろしいが、悩んでる時間もないし、おばちゃん嬉しそうだし、やったるかという気になってくる。

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可愛いおばちゃん。



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この程よく絶望的な先の見えない道を、走っては歩き走っては歩き、24時間テレビのように進んでいく。
精神的なものが肉体に影響するっていう考え方があんまり好きではないけれど、いい出会いがあると元気になれるもんだなと、最近よく思う。



なんだかんだ無事日没前に到着でき、飯、シャワー、洗濯を済ませすぐ就寝。身体はやっぱり疲れてる。