【台湾徒歩環島】28日目 東河郷都蘭村~成功鎮都歴部落
朝から自転車と共に進む。
このトライアスロンの大会は、自転車180キロ、マラソン42キロ、水泳3.8キロあるらしい。
どれか一種類でも大変なのに、それが三種類もあるんだから、やる人はドMだと思う。
それにしてもカッコイイ。
歩き始めてすぐ足の小指の豆が痛くなる。
靴で圧迫される痛みでびっこをひきながら歩くが、遂に限界になりサンダルに履き替える。
サンダルにするとだいぶ痛みがマシになったので、とりあえずはサンダルで歩くことにする。靴をザックに詰めたのでパンパン。
警備のおじさんに歩いてるのかと聞かれ、徒歩で環島していると言うと『舒跑』の1.5リットルをもらう。
日本人に昔から馴染みのあるスポーツ飲料が、ポカリスエットかアクエリアスであるように、台湾人にとってはこれが子供の頃から親しんできた定番スポーツ飲料らしい。
僕は歩いてるだけなのでトライアスロンの人に悪いような気もするが、ありがたく頂く。
残念なことに、歩き始めて早々トライアスロンのみんなは折り返して行ってしまった。
仲間の輪からはぐれてしまったような、寂しい気分になる。
さっきまでの活気とは正反対の、誰も通らない寂しい道をしばらく一人で歩いていると、原付のおじさんに声をかけられる。
徒歩環島に興味があるので、歩いている人を見かけると声をかけるらしい。
そして商店で買ったばかりの冷たい水を頂く。
今日はたくさん水分をもらいとてもありがたいが、鞄が次第に重くなっていく。
昼時になり腹が減ってきたが、なかなか食事ができるような場所がない。
ようやく小さな町を通りかかるが、外国人サーファーを狙ったような洒落た店が二軒。メニューを見ると値段が高い。諦めて先へ進む。
歩き出してすぐ道沿いに肉まん専門店が。肉まんと豆乳にありつくことができた。
食べ終わる頃、ウェイチンからLINEに連絡が入る。
「今どこにいる?」
昨日の夜、ウェイチンから連絡があった。
二連休を使い東部一周をするから、様子を見に来ると言っていたのだが、どうやら追い付いてきたらしい。
場所を説明すると、ほどなく自転車に乗って近づいてくる見知った人影が。
『自転車!?』
東部一周と言うから、僕はてっきりバイクで来るものだとばかり思っていた。台東でレンタルバイクを借りて。
花東公路は片道170㎞ある。自転車ではかなり厳しい。
間に合うのだろうかと思って聞いたら、途中の30号線玉長公路から山線へ向かうと言う。それならまあ大丈夫そうだ。
ウェイチンはコンビニで休んで行くというので、またあとでと歩き始める。そう、何もないと思って肉まんの店に入ったのに、町から大通りに出ると、すぐにセブンイレブンがあった。
昼飯も食べ快調に歩いていたが、当たり前だがすぐにウェイチンに追い付かれる。
それからは二人で歩きながら進んだ。
8対2の割合でウェイチンが喋っているが、たまに喋ると面白いように中国語を直される。普段みんなが上手い上手いとお世辞で褒めてくれて、調子に乗っていたので鉄槌が下った。
歩いているとたくさんの出会いがあるし、色々なことが起こるけれど、基本的にほとんどの時間は一人で黙々と歩いている。
誰かと歩くのは賑やかで楽しい。
もちろんそれが毎日なら、また違ってくるのかもしれないけれど。
今日は足が痛いのであまり距離を歩かないことにして、都歴にある派出所でテント泊をすることにしていた。
花東公路の海線は宿泊施設は少ないが、派出所等の公共施設で、無料でテント泊ができるようになっているところが数ヶ所あるらしい。
都歴の派出所はテント泊ができシャワーまで使えると聞いていたので、昨日からここに目星をつけていた。この先は成功まで街らしい街がない。
ウェイチンはテントを持っていないので、まだかなり距離があるが、30㎞ほど先の長濱まで行こうかなと言っている。
とりあえず僕は派出所に入りお巡りさんに声をかける。
「ニーハオ、ここでテント泊出来ると聞いたんですが」
「ない……」
「え……」
「もうない無くなった。外の看板見てみろ!!」
「は、はあ…」
虫の居所が悪かったのか、タダでテント泊しようとやってくる人間にうんざりしているのか、凄い剣幕で追い返されてしまった。
派出所を出てウェイチンに断られたことを伝え、二人で看板を見てみると、たしかに露営地の看板には斜線がしてある。
どうしたものかと二人で途方に暮れていると、「こんな時はいつもどうするの?」と聞かれる。
こんな時は、途方に暮れて歩いてるとなんとかなっていく、と言うと、じゃあ歩くかということに。
街を抜けてすぐ(街といっても凄く小さいが)、住宿、露営の看板をかかげた民宿が現れる。
小さな民宿だが外観が綺麗でまだ新しいことが見てとれる。
ちょっと値段は高そうだが、当てもないので取り合えず入ってみる。
入ると感じのいい女性が迎えてくれて、これまた感じのいいオーナーを呼んできてくれた。
値段を聞くとテント泊は600NTD 、僕はオーケーする。宿泊はいくらか忘れたが、ウェイチンはかなり値切って驚くほど安くなっていた。
こういう時に値段交渉の能力がゼロなのが悲しい。
僕の押しが弱すぎるのもあるが、全体的に女性のがこんな時強い気がする。
そんな僕を見かねたのか、なにも言っていないのにオーナーが値段をまけてくれる。ありがたい。
「民宿をして初めての日本人で、初めての徒歩環島だから。そのかわり、日本人から見て何か宿を改善するアドバイスがあれば教えてよ」
オーナー自身押しの弱そうな風貌で、どちらかというと同種な臭いがしないでもない。
ついにテント登場。結露対策にコンクリートに設営したが、これで酷い目にあう。
今回は基本宿に泊まり、寝る場所が見つからない、もしくは値段が高過ぎる場合のみ使う予定だったので、最初からテントはいざというときだけ、使わないなら使わないでいいと思っていた。なのでマットは簡易的な驚くほど軽量で薄手の物を持ってきたのだが、コンクリートの硬さが骨に響いて全然眠れなかった。
夕飯はオーナーが教えてくれた町の食堂へウェイチンと向かう。この辺りで食事ができる場所は、そこ一軒のみだそうだ。
お腹を空かせて教えられた場所へ向かうも、見事に閉店していた。
仕方ないので商店でビールを買って宿へ帰る。宿のカップラーメンなら好きに食べていいよと言ってもらっていたので、思い思い好きなカップラーメンを選び乾杯。
他に宿泊客はいないので、四人でのんびり過ごす。
たまには歩く距離が短いのもいい。むしろ毎日このくらいの距離がいいくらいだ。
とは言え毎日ゆっくりしていると、どんどん予定から遅れてしまう。
翌日は早目に起床しようと早目に就寝。
歩き出してから、毎日早寝早起き。健全な生活リズム。